絶対主従関係。-俺様なアイツ-

「せ、先日配属された涼原愛子ですぅっ」

 ついに我慢できなくて、きれいに磨き上げられた爪先を踏み付けてやる。

その瞬間、アイツの目は見開いて、ぴょんと肩が跳ねた。


「いってぇ! てめぇ、なにしやがるっ!!」

 鋭い視線は、アイツらしい。

あんな寝ぼけたワケのわかんないオーラを出されるより、よっぽどマシだ。


「あーら、なんのことかしら?」

「この童顔女! へらず口はいっぱしのようだなっ」


「お褒め頂き光栄ですわ、ミ・カ・ド・サ・マ!」

「こンの、前髪パッツン女め〜っ!」


 あたしたちは真っ黒のリムジンが静かに走る中、激しい攻防戦を繰り広げる。

ギリリと睨みあい、再び幕を切ったのはあたし。


「そーんなあたしに毎朝起こされてるくせにっ」

「お前たちの仕事だろうがっ」

 ホントに、コイツの脳みそはオボッチャンで出来上がってるみたいだ。


「ほほ〜う、人を布団の中に連れこんでおいてよくいうわねぇ」

「はぁ?作り話もいい加減にしろよっ?」

 キレイな眉をゆがめて、怪訝そうな表情。

まさか忘れたなんていわせないわ。


「アンタが呟いた言葉、一句たりとも忘れてないわよ!」

「勝手に話を進めるなっての!」


 もう、お互い後には退けない。

ヘンな意地のぶつかり合いなのは、重々わかっていた。


更に口を開こうとしたあたしに降ってきたのは、アイツの憎たらしい言葉ではなく……


「あははははっ」