小首をかしげた紅葉さんも、同じように唸っていた。

そして何か思いついたのか、可愛らしい笑顔をもう一度あたしに咲かせる。


「帝さまにお願いしてみたら──」

「い・や!」


 アイツの名前が出た瞬間、お断りだ!

制服のスカートをきゅっと握り締め、あたしはトクトクとどれほどアイツを嫌っているか説明しようと勢いあまって足を踏み出したときだ。


「…なら。ご挨拶も兼ねて、皇さまを伺ってみたらどうかしら?」

 紅葉さんの緩いウェーブのかかった髪が揺れた。


 そうか、現在この屋敷に『藤堂家』は二人いる。

きっと同じ藤堂だって、アイツほど酷くはないはずだ。


 ま、期待しないけどね。


「はい、そうですね」

 本心は口に出さず、紅葉さんに見習って笑って見せた。

そのコウさまとやらは、帝よりは人望もあるみたいだしね。


 くるりと踵を返すと、背後から慌てた紅葉さんの声。

「帝さまのお部屋の、更に奥よ?」

「はーいっ」

 あたしは調子よく返事をして、スカートを翻した。


 大きくらせん状になった階段を、トントン、と階段を上る。

木目調の深い色は、まるでお姫様みたいな気分を味わえるから、こっそり気に入っている。


ふふ、と一人笑っていると、ようやく最後の一段を上りきる、


その瞬間だった。


「ぬぁっ」