絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 それからは、何もいつもと変わらずに過ごせた。

小町はいつだってあたしの隣で笑っていて、このクラスのムードメーカー。


 つぶらな瞳は女子たちにも人気があるのに、決して小町はなびかない。

それもそうだ。

この学校で勤労学生しているならば、恋している余裕なんてないのだから。


 時計がL字を作る頃、あたしたちはもう一つの顔付へと変わっていく。

「じゃあな、愛子!」

「小町も頑張ってねっ」


 爽やかな笑顔を残して走り去る小町を送り出し、あたしも一人、帰路につく。


 うっすらと残る白い雲をたどる様に、まだ歩きなれない道のりを今日一日を思い出しながら進んだ。


 あたしってば、今日はどうかしてた。

なんで泣いちゃったりしたんだろう?


 現実は甘くない……そんなこと知ってるもの。

ただ、アイツがいたから。


 大嫌いな、アイツのせいだ。

そんなふうに考え始めたらより一層滅入りそうで。

そしてその重い足取りは、アイツがいる家へと向かわなければならなかった。




 相変わらず大きな門をくぐり、妙に緊張しながら昨日晴海さんに教えてもらったとおりに屋敷へと戻る。


 真っ白の扉を開くと、パーティホールのような玄関。

朝は寝ぼけていたし、人もたくさんいてよくわからなかったけれど。


 相当、広い。

「ただい……戻りましたぁ」