絶対主従関係。-俺様なアイツ-

「本当に迷惑かけてすみません…」


 そう。

こんなんじゃ、何年経ってもお父さんと一緒に暮らせない。


 すくっと立ち上がり、深々と頭を下げる。

そして、ほんわかと胸の奥が温まるような想いを抱きしめて、精一杯笑った。


「ありがとうございます!」


 決してムリヤリじゃなく、とびきりのを見せたいと……あたしが思ったんだ。





 ようやく『彼』は

「じゃあ、もういくね」

と、あたしにむかってヒラリと手を挙げて、白い歯を見せた。


その姿にもう一度腰を折り、あたしは授業の行われる教室へと急いだ。



 カラリ、とこっそり戸を開くと、ちょうどビデオが上映中だった。


「愛子、こっち!」

 小声で呼ぶ小町の声を頼りに、こそこそと机に隠れるように向かう。

真っ暗闇の中、心配げな瞳があたしを見つめる。


「…平気?」

 目の前の小町は身を乗り出してまで尋ねてきて、そこまで心配かけてしまった友達に申し訳なく思った。


 しっかりしなくちゃ!


「ゴメンね、もう平気だから」

 幸いなことに、先生に気づかれることなく、あたしはようやく授業に戻れたのだった。


ううん、本当はどこか浮かれていた。



 優しく微笑む、『彼』のことを考えて───