絶対主従関係。-俺様なアイツ-

「いえ、それが……」

 しゅん、と肩を落とし、入り口から二つ目の机に向かう。

けれど、その向こうに先客がいたことに気づかなかった。


「じゃあ失礼しますね」

 そのほんわかしたような声音に、ぱっと顔をあげる。

と、そこにはあたしよりも断然背が高く、黒のスリムスーツを完璧に着こなす男の人。


 にっこりと先生に笑いかけたのだけど、その爽やかさにあたしまでドキドキした。



「あ、お話し中に……っ」

「構いませんよ」


 その男の人は、勝手にドギマギしていたあたしをやんわりと制する。

そんな紳士の姿に、ますます優しい気持ちになってしまう。


 さわやかで優しい、彼。

アイツと同じ黒髪なのは気に食わないのだけど、くりくりと毛先を遊ばせ、柔らかい笑顔は全然違う。


 比較するのが失礼なくらいだ。


「話を折ってすみませんっ」

 ペコリと思い切り頭を下げ、今日だけで何度目かの深いお辞儀か数えそうになったとき。


「…それじゃ、僕はこれで」

「弟君にもヨロシクな?」

 先生は彼と親しげに話していて、なんとなくそれすらもうらやましいな、なんて思ってしまった。

じいっと穴が開くほどの視線を送っていたあたしに気づいた彼は、再び春風のように微笑みかけてきてくれた。


「じゃあ、がんばってね……スズハラさん?」