絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 なんとか奮い立たせた体は、時間を経過するごとに意識を取り戻す。


「最悪だ、最悪だ……」

 なにが最悪かって?

あんな大嫌いなアイツに、少しでもトキめいてしまった自分。


 当の本人はというと、あの寝呆けた姿はどこへやら。

さっきのことなんて覚えていないのだろう、ピシッと制服を着て、何食わぬ顔で食卓現れた。


 文句でもいってやりたかったのだけど、一度だって目も合わない。


 ぴりぴりとしたあたしの怒りが、隣で見守る紅葉さんにも伝わってしまったのか。


「愛子さん、きっと帝さまも寝呆けていらしたのよ」


 眉をハの字にした紅葉さんに宥められる。

そんな答えじゃ、全然納得なんてできない!


 すぐさま口にしたかったのだけど、周りで控えている同僚たちのこともあり、とりあえずゴクンとつばと一緒に言葉を飲み込む。


一呼吸置いて、あたしよりもすこし背の高い紅葉さんを見上げる。


「……例え百歩譲ってそうだとしても、ですよ。紅葉さんはあんなことされたことあるんですかっ?」


 あたしの指導係を引き受けてくれた先輩だとはわかっている。

でも、ついつい睨みをきかせずにはいられない。


「な、ないですけど……」

 紅葉さんの返答に、やっぱり素直にカチンとくるわけで。


「あんの痴漢野郎……っ!」


 一度だけじゃなく、二度までも!!



「あいつは人のキモチなんてこれっぽっちもわかってない!!」