絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 なんで、なんで、なんで……!?


 逆上せそうな頭で考えてみれば、同い年の男の子の寝起きなんて見たことない。

せいぜい修学旅行などで部屋の前でばったり会うくらいであって、けど、ソレはお互い身体が朝だという意識があってのこと。


 ぼうっと目を擦るミカドの姿は、あんな悪態をつくなんて思えないほど……あどけないように見えた。


 必死に平静を装うとするあたしの横では、てきぱきと紅葉さんが働く。


「帝さま、お目覚めのハーブティです」

 手際よく廊下から受け取ったシルバーのワゴンから、ほんの少し湯気の立つ、これまた純白のティーポット。

その香りはじんわりとカラダを沁みるようで、あたしのほうがはっと気づかされる。


「……あぁ」

 うっすらと開かれた切れ長の瞳は、きっと魔性。

不覚にも、ぐらりと脳内が回転したみたく、あたしは眩暈すら感じてしまいそうだった。


「愛子さん、帝さまに持っていって差し上げて?」


 作法なんてわからないあたしを気遣ってくれたのだろう。

これくらいしか出来ないのだから、なんとか意識を踏みとどまって震える手で小さな盆にティーカップを載せて受け取る。


 牛丼屋で培った盆捌き、今こそ発揮するとき。



「あ、あの……み、ミカドさ…」


 言い馴れないアイツの名前を口にしたときだ。


「……い…」

 ミカドが何か呟いた。

そのまま、意識の薄い黒い瞳が、ちらりとあたしに向けられた。


 なんとなく、嫌な予感。