絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 ゾクリ、と毛が逆立つような感覚に襲われた。

ただの寝起きの声なのに。


 その艶やかさは、第六感があたしに『危険』だと知らせる。

それはどういう意味を持つのかはわからないのだけど……。


 しかし、折角いれた気合もあって、あっさりここで逃げるわけにはいかない。


「さあ、愛子さん」

 あたしの戸惑いに気づくことなく、紅葉さんは笑いながら扉を開く。

あのうめき声が合図だったのか、開かれた部屋に恐る恐る足を踏み入れた。



 その向こうは……まるで、お城。


 大きな窓はあたしの部屋にもあるけれど、それが何個も並ぶと迫力が違う。

一応高校生ということもあるのか、色合いのよい光沢のあるナチュラルブラウンの西洋風デスクは、さながら社長室。


 そして一番目に付くのはダブルサイズ……いやきっとキングサイズのふかふかのベッド。

真っ白の羽に囲まれるかのように、主はうつらうつらとしながら上半身だけが起きていた。


 だけど……!


「ちょ、ちょちょ……っ」

 見慣れないその姿に、あたしは動揺を隠せないでいた。


 布団とお揃いかのように、つるりと見ただけでわかるシルクで出来たパジャマから覗かせる引き締まった胸板。

太い首はすっと筋を通し、息をするたびに微かに震えている。


髪は少しだけ乱れているのだけど、艶のいい毛並みはそれさえも色香をかもし出す。



 ただ、それだけなのだ。



それだけなはずなのに、あたしの心臓が収まることなく波打っている。