絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 しゅんと肩を落として、豪華なワインレッドの絨毯に目を落とす。

するとくるりと背を向けた主任は、ふう、と呆れたため息を交えてぽつりと呟いた。


「慣れないでしょうが、切り替えが肝心ですよ?」


 こっそりと励ますように。

それは主任が、鬼からヒトに見えた瞬間でもあった。


 まだあたしは納得できたわけではなかったけれど、そんな矛盾を主任は受け止めてくれたみたい。

苦笑いをした紅葉さんも、何も言わない主任も……このお屋敷にも、何かあるのかもしれない。


けれど、やると決めた以上、退くわけにはいかない。


 ド貧乏根性・上等でしょう?




 それから簡単に今日の予定を流した後、早速メイド初日を迎えた。

とにかく早い朝、朝食の準備の合間に自分たちも食事を取る。


まだ太陽が顔を覗かせたばかりというのに、すでにフルスロットルで動き回る姿に圧倒される。


あたしが今までバイトしていた牛丼屋のお昼の厨房みたいだ。


 呆気に取られていたあたしに、ニコリと紅葉さんが微笑む。


「愛子さん、帝さまを起こしに参る時間です」


 ふわふわしたショートの髪を揺らし、可憐な花を咲かせる紅葉さん。


だけれども、あたしはピシリと凍てついた。




「…………は?」


 誰が……誰を?