絶対主従関係。-俺様なアイツ-

「早速ですが、昨日から一人新人が入りました。皆さん、業務もありますが、どうか拙いところは教えてあげてくださいね」

 事務的な口調の主任。

けれどあたしに挨拶一つさせず、手に持ったバインダーを覗き込んでいる。


 見ない顔をは新人だと思え、ということ?

なんとなく淡白な職場だな、とあたしは客観的にみてしまう。



「それから、近日中にコウさまががお帰りになられるそうです」


 主任が口にした瞬間、さっきまで静かだった周りがどよめいた。



 え、なに?コウサマ?


一人わからず、きょとんとしていると、隣の紅葉さんからこっそり補足情報。


「藤堂家には二人のご子息───帝さまとそのお兄様の皇(コウ)さまがいらっしゃるの」

「へえ……」


 アイツに兄がいたなんて、あたしは全く知らなかった。

顔や性格まで似ていたら、きっとそれだけで嫌いになりそうだ。


 表情に出てしまったのか、フォローするように紅葉さんは笑う。


「皇さまは……とてもお優しくて、素敵な方よ?」

 ぽそりと呟いていたけれど、それはどこか恥らうようにも見える。


 確かに、周りの女性陣はきゃっきゃと騒いでいるし、男性たちも心なしか嬉しそうに笑っている。

そのリアクションに、あたしは首をかしげた。



「ミカドは…嫌われてるんですか?」