絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 何か聞かれてくないコトでもあるのかな?

それを感じ取って、気にさせないよう、あたしはすぐ笑って見せた。


「わたしもなんです!いやぁ、嬉しいな。一人でいたら気が気じゃなくて……」


 実際、友達をつくっておけば寂しさはまぎれるし、仕事への意欲だって沸くこともある。

それに、あの痴漢に少しでも距離をおきたいもの。


 味方をみつけたようにあたしは満足で、うんうん、と頷いていた。


「……あの、愛子さんは、どうしてここへ?」

「え?ああ……」


 急に聞かれたことにあたしの頭は我に返る。

しかし初対面の人に、自分の身の上話をしてもヒかれないだろうか?


 そんなことで言葉が詰まっていた。

なのに、ギャクに紅葉さんに気を遣わせてしまったみたいで、


「ご、ごめんなさい、立ち入ったことを聞いちゃって!……気にしないでね?」

 紅葉さんはぱたぱたと手を振ると、くるりと体を正面に向けた。

ちょうど、主任が晴海さんとともに前に現れたのだ。


 わたしは別に後ろめたいことはなかったのだけど、イチから話すのも時間がかかるので、どこかほっとしてしまった。


「おはようございます」

 主任が背を正したまま腰を折ると、周りも一斉に同じように続く。

あたしも慌てて、周りに合わせるように頭を下げた。


 これから、いわゆる朝のミーティングが始まるのだ。