朝五時。

警報機みたいなジリリリリ、と頭をかち割る音が鳴ったと思ったら、目の前には知らないおばさんが鬼になっていた。


 ……っていうか、主任!!


「愛子さんっ!?」

 鬼というか、だんだん般若みたく……

あたしの寝ぼけ眼に待ちきれず、ぷちんと何かが切れる音が聞こえた気がした。


「いつまで寝てるのぉっ!?」

「…っは、はいぃぃぃぃっ!!」

 無理やり目を擦り、あたしは隣で監視されながら、やけにビラビラした作業着に着替えた。


「いいですか!?あと五分で支度なさい!!」


 ───あの最悪な初日の翌朝のこと。

学校の後仕事を終えて、あたしも疲れきっていた。

シャワーを軽く浴びてベッドに飛び込んだら、住み込み働きに来ていることをすっかり忘れるくらい眠ってしまった。


 今まで見たく自分のことだけをすればいい朝ではなくなったのだ。

とほほ、と肩を落としながら、まだ抵抗のある『作業着』を身につけ、未だ慣れないこの環境にため息を零す。


いや、だからといって投げだせないのだけど。


 肩をしょんぼり落として玄関広間に向かうと、そこにはすでに人だらけ。

全て晴美さんみたいなスーツを着ている男の人か、あたしと同じ格好の女の人。


 ど、どうしたらいいんだろう……?

恐る恐る見回しながら集団に足を踏み入れた瞬間だった。