「コレ、一点モノだから、世界中探してもどこにもないんだよね」

 そんな言葉に、あたしは涙が零れた。

自分のおろかさに情けなくなる。


「…な、なんでもしますから…っ!」 

 更に涙で濡れるシーツに額を埋めた。

ぎゅっと目を瞑る中、ぎしっとベッドが沈む振動が伝わってきた。


でも謝っている最中のあたしが、今、顔をあげるわけには行かない。


 殴られたり、犯されたり?

それとも、殺されてしまったりするんだろうか? 


最悪の状況が浮かんでは消えていたあたしは、急に視界が変わった。



 顎からつきあがるような力に、意図も簡単に体は仰け反り、そのままぱたりとシーツの波に倒れこんでしまった。

目の前には見慣れない天井と、小さな淡い照明。

 
ワケが解っていないあたしにふっと影が落ちる。


「手付金代わりな?」

 うっすらと、キレイな顔をなぞるように映し出されたのは、射抜くような眼差しで見下ろしきたアイツ。


その強い視線。

まるで金縛りに遭ったように小指一つ動かせなかった。


 ゆっくりと近づいた生温かい息遣いは、あたしの口内に広がってあたしの体温を急上昇させる。


 それはあまりにも唐突で、かつ、甘い痺れ。


 …キ、ス……?

あたしは世界一大嫌いなヤツに唇を奪われているんだ。


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