絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 ようやく開放されて、アイツはその音が響いたベッドの窓際に屈む。

 強い力でこんなに押さえつけられたのは初めてで、男の人が怖いだなんて思ったのも初めてだった。

ゆっくり上半身を起こすと、アイツはまだ屈んだままだった。


「……あ、あの…」

 あたしが声をかけると、意地悪な笑顔できれいな顔を近づけてくる。


「コレ、どうしてくれるの?」

 アイツが目の前に突き出してきたのは、さっきあたしが振り上げた額縁。

その中には油絵で描かれた、抽象的な女性がいた。


でもその絵は、ところどころガラスが割れたせいか剥げてしまっていた。


「ご、ごめんな…さい…」

 涙も引っ込んで、おまけに血の気まで引いていた。

こんなお屋敷に飾られている絵画を、あたしは壊してしまったのだ。


「謝ったところで、もう絵は戻ってこないんだけど?」


 責め立てるようなその言葉に、あたしはぐうの根もでない。

ベッドの上だけども正座になおり、シーツに額を擦り付けて頭を下げた。


「本当にごめんなさい!あたし、今日からここのお屋敷で使用人させてもらうことになってて……っ」


 大事なものだとしたら、言い訳なんてしてはいけない。

だけど、今ココを追い出されたら、あたしはもう帰る場所がないんだ。


「今はお金がないんですけど、いつか弁償するんで!」

 どんな目に遭っても、お父さんと暮らせるようになるまでは……!