あまり顔は覚えていないんだけど、彼は一緒になって空に舞ってしまった書類を慌てて拾い集めてくれた。
知り合いもいないこの高校で、あたしはすごく嬉しくて。
「悪いけど、急いでるんだ」
手渡すと同時に、彼は走り去ってしまった。
お礼もいえてないことに気づいて、あたしは後を追おうとしたの。
でも、彼が消えた先の静かな廊下で、アイツは声を響かせた。
「勉強や金がなんだってんだ」
バカにしたような口調に、あたしは腹が立った。
「さすが言うことは違うな。あのトウドウ家のミカドは、さ」
手伝ってくれた彼もまた、呆れていたのか悪乗りしたのかはわからないけど、そう口にしてた。
アイツは何も解っていない。
どんなに勉強したくたって、結局は最低限のお金が必要なんだってこと。
別にお金持ちがうらやましいってワケじゃない。
……―いや、本当はうらやましいけど。
それでも、人が一生懸命やっていることをけなしたり、蔑んだりするなんてこと、あたしは教わってない。
自分が一日を不自由なく生活することが、どれだけ恵まれているかなんて、アイツは解ってない。
そう思ったら、無性に腹が立ったんだ。
知り合いもいないこの高校で、あたしはすごく嬉しくて。
「悪いけど、急いでるんだ」
手渡すと同時に、彼は走り去ってしまった。
お礼もいえてないことに気づいて、あたしは後を追おうとしたの。
でも、彼が消えた先の静かな廊下で、アイツは声を響かせた。
「勉強や金がなんだってんだ」
バカにしたような口調に、あたしは腹が立った。
「さすが言うことは違うな。あのトウドウ家のミカドは、さ」
手伝ってくれた彼もまた、呆れていたのか悪乗りしたのかはわからないけど、そう口にしてた。
アイツは何も解っていない。
どんなに勉強したくたって、結局は最低限のお金が必要なんだってこと。
別にお金持ちがうらやましいってワケじゃない。
……―いや、本当はうらやましいけど。
それでも、人が一生懸命やっていることをけなしたり、蔑んだりするなんてこと、あたしは教わってない。
自分が一日を不自由なく生活することが、どれだけ恵まれているかなんて、アイツは解ってない。
そう思ったら、無性に腹が立ったんだ。


