秋の涼しさが、少しずつ寒さに変わりつつある風が吹く頃。

校内はやけに活気があふれていて、しかも、その周りには大体他校の生徒が混じっている。


「交流会?」

「うん、姉妹校の修桜高校の学生とだって。毎年二年生同士が数日間行き来して、社交性を──っていってたよ?」

「あはは、聞いてなかった……」

 我が相棒ともいえる、隣の小町は子犬みたいな目を更に緩めて呆れていた。

そういえば、去年の今頃も校内で道を聞かれたりしたかもしれない。

生憎こちらはバイト三昧の生活だったので、すっかり忘れていた。


「全く。そんなんでよく文化祭でうちのクラスを入賞させたよね」

 苦笑いをしながら小町を肩をすくめた。


そう、文化祭の結果は──


『第三位、たこ焼きの2年B組!』

 スピーカー越しに聞こえたのは紛れもない“敗北”の宣言。


「う……そ…」

 当日、実行委員会が急ピッチで行った集計。

 実行委員総出で行われた集計は、責任を持って実行委員長から発表されるわけだけど、正直な話、自分のクラスの得票とか数えている暇はない。

その数時間後に講堂で開かれる閉会式に間に合わせないといけないからだ。


 汗だくで終わらせた集計も、いざ始まれば、緊張は皆同じ。

そしてその結果は、決して悪い成績ではなかった。むしろ、貧乏クラスで第3位は、誇っていい入賞だ。

けれどあたしには、個人的な問題で“1位”を獲らなくてはならなかったのだ。


 我がクラスメイトたちが興奮する中、目の前が暗くなっている背後には静かに声が響く。

「どうやら賭けは俺の勝ち──」

 ふふん、と鼻を鳴らして、隣にたったのは妙に色気を巻いているミカドだ。

腕を組んで静かに勝利の言葉を待つためなのか、瞳を閉じた。


 そして再びスピーカーからは、興奮してるからなのか割れ気味の声で聞こえてきた。


『第二位、なんと円舞会の2年E組!』