絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 落ち着かないまま到着した講堂は、まさに人だらけだった。

どちらかというと、女の子のほうが多いくらいで、ステージに向かって黄色い声が送られていた。

「すげぇ人だかり……」

 うざったそうなミカドの感想に、あたしもちょっと同感。

けれど音が鳴りやまないその空気に、どこか高揚感も覚えるのも事実。


「小町、もうでてるかな?」

「コマチ?」

 壁に隠れるようによりかかるミカドは、あたしの言葉を珍しく拾う。

なんだか変なことづくしだ。


「うん。さっき有志にでるって言ってた友達よ」

「ふーん……」

 ドラムの重低音が連打するたびに身体を打ち鳴らし、一際、周りの歓声が大きくなった時だ。

あたしのよき理解者でもある親友の姿を見つけた。


「あ、いたっ!」

 さすが我が校なだけあって、ステージは設備が整っており、どこかのコンサートホールと思わせる。

ライトを浴びてステージにはマイクスタンドを握るボーカルの隣。

決して中央で目立ちはしないものの、汗を光らせながら楽しげに掻き鳴らす小町の姿。


 さっきまではハッピ姿だったのに、今ではメンズゴシックな服を身につけていた。

ガラリと変わった印象に、なんだかいつも隣にいてくれた小町じゃなくみえる。


「小町、カッコイイ……」

 あんな子犬みたいにカワイイと思っていたのに、『オトコ』って言っているみたいで怖いくらいかっこよく見えた。


 ビリリとしびれるような音に聞き入っていると、多分小町はあたしに気づいてくれたのだろう。

視線があったと思ったら、ふと緩めた小町の笑顔に、あたしはどこかほっとした。