絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 肩と肩がぶつかり合い、時間の経過とともに続々と人が混みあう。

それでも、騒がしさを貫くように声を張り上げている時だった。


「いらっしゃいま──」


「あぁ……っ!」

 誰かの驚いた声と同時に、あたしに衝撃が走る。


 近くで話し声はするなあとは思った。

けれど、こんな人通りが激しくなった道では気づかなかった。


「痛……っ!」

 悲鳴が先か、そのドン、という音が先か。

思わず喉から絞りこぼれた瞬間だ。


「…てンめぇ……なに、してやがる…」

 その聞いたことのある声に、ぱっと見上げれば、端正な眉間を思い切りしかめたアイツ。


「み、ミカド……っ!?」

 アイツがそこにいたことでも驚きなのに、次第に理解していく現状に、血の気が引いていく。


 なにせ目の前には、部屋に飾ってあったあの高級そうなタキシード姿。

しかもその真っ白なシャツには、さっきまであたしの手にいたはずの“商品”がべっとり抱きついている。

まるで、愛し合う恋人のように。


 事態を把握していく周囲からは、恐怖にあおられるような息をのむ声。


 あたしってば、かなりヤバくない……?


もう一度、アイツの顔を見るのが怖くて、あたしは癖になったように思い切り頭を下げた。


「す、すぐ洗いますぅっ!」

「あったりまえだ!!」



 怒声がこの場を支配したのだった。


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