絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 なにがすごいかって、制服姿よりもスーツなどのフォーマルな姿の来場者のほうが多いってこと。

おそらく送迎広場はとんでもなく渋滞になっていることだろう。


「場違い、かな?」

 すでに負け腰なあたし。


「愛子、ほら指示して」

 ほんわか笑う小町にはっと気づき、きゅっと手を握る。

そうだ、どんなに不利でも、あたしたちにだって勝機はある。


「さぁ、始めるわよ!」

 まだ太陽が上りきっていないけれど、仕込みを始める。


「こっちには“香り”ってもんがあるのよ」


 温まったクレーターみたいな黒い鉄板に油を敷き、生地を投入。

さらに、一口サイズに切られたタコを手際よく埋めて、ぷくぷくと焼けてきたら鉄串で素早くひっくり返していく。

その香りに、さすがの来場者たちも振り返っていた。


 最後に、市販の専用ソースをベースに、みんなで練りに練った秘伝のタレを、刷毛でひと塗り。そしてまたひと塗り。


「お好みで、こちらもどうぞ」

 それは決まり文句で、ふわふわと踊るような削り節と、口当たりをさらに甘くまろやかにさせるマヨネーズ。


 その香りに釣られるように振り返る視線が、ぞくぞくと体中を痺れる。

悪寒なんかじゃなく、その誘われるような周りの瞳がたまらなく嬉しいのだ。


「あの……、おひとつ、くださらない?」


 そんな中で、一人の女の子が声をかけてきた。

ミカドたちみたいな上級クラスっぽい上品で、ふわふわした髪を揺らしながらニッコリ笑っていた。


 このクラスに、“お客様”へ失礼なことをする輩は、いない。

B組のお客様第一号に、あたしたちは更にテンションが上がり、全員で声を張る。


「はい、よろこんで!」


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