絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 ようやく迎えた文化祭初日。

校門が開いて間もない朝の時間、すでにあたしは学校にいた。


「どいたどいたーっ!」

 誰もいない静かな廊下を、誰もいないというのに騒がしくあたしは走る。

数日前の禅くんとのやりとりを忘れたかったのかもしれない。


 だって、こんなことになるなんて思わなかったんだ。




「専属、やめてくれない?」

 禅くんが笑顔で詰め寄ってくるのを、あたしは冷や汗を感じながら、なんて答えるべきか悩んでいた。


「あ、あの、禅くん…お、落ち着いて…?」


 そもそも、これはあたしの意思ではない。


「僕だってそれなりの家柄だし、同じクラスだよ。帝の側にいれるんだから、僕のほうが適役だと思わない?」

「は、はぁ……」

 ずずいと近づく禅くんの迫力。

あたしは圧倒されっぱなしだ。



「ってことで、帝の世話は僕がするから。愛子ちゃん、もうこのお屋敷を出ていいよ?」


「…はあ……って、ちょ、ちょっと!」


 危ない、危ない!

禅くんの勢いに呑まれるところだった。


「それは困ります!!」

 あたしには、もう行く場所がないんだ。

ここで働いてすこしでも蓄えを作って、お父さんともう一度暮らすために。


まだここを去るわけには行かない!


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