絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 ミカドほどではないけれど、背の高い禅くんがやけに子供っぽく笑っていて、それがとても微笑ましい。


あたしなんかじゃ、このお屋敷の人たちをこんな顔にさせられないもの。


「あら、愛子さんも一緒にお帰り?」

 横から現れたのは紅葉さん。

皇さまといい、紅葉さんといい。

ホント、ポーカーフェイスが上出来すぎてびっくりする。


 まだ聞かない。

そう心に決めて、何もなかったように笑い返した。


「はい、ただ今戻りました」

 ペコリと頭を下げると、その先にいた人だかりに、紅葉さんはあっと小さく声を漏らす。


「禅……」

 紅葉さんまでもがするそんな反応。

禅くんと、この藤堂家は相当縁があるのか、なんて感心していた。


「騒がしいと思ったら、禅がいたのか……」


 そういって奥の階段からゆっくり降りてきたのは、物腰の落ち着いたあの晴海さん。

あたしも制服ながらペコリと頭を下げる。


「ああ、愛子さん。お帰りなさい」

 このお屋敷で一番最初に優しくしてくれた人だ。

お帰りなさい、といわれると、ぽうっとあったかくなるような気分になれる。


 そんな晴海さんにつかつか歩み寄って、お辞儀もせず顔を覗き込んだ禅くん。


「帝はもう戻ってるでしょ?」

「さっきお部屋に戻るのを見かけたけれど……」


 晴海さんは、このお屋敷の従業員の中でもトップクラスだ。

そんな晴海さんにむかって、この軽い口調に、あたしは唖然とする。


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