絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 気まずい空気が流れる車内。

あたしはごくりと唾を飲み込んで、聞きたかったことを口にした。


「か、神城くんは──」

「禅で構わないよ?」

 遮るように浮かべた人懐こい微笑みは、やっぱり憎めない。

すうっと息を吸って、あたしは向き直った。


「……禅くんは、帝の友達でしょう?それなのに、なんであたしのライバルなの?」


 むしろあたしの方が格下だと思う。

眼をそらさなかった禅くんが、寂しそうに目を伏せた。


「僕は、さ。それだけじゃないから」

「……え?」


 小さな声が微かに届いたころ、車は静かに停まる。

そして後部座席が運転手によって開かれ、あたしはまたしても慣れない動作で車を降りる羽目になった。


 そこは、あたしの働く藤堂家のお屋敷。


『屋敷に連れて行ってあげるから安心して?』


 彼は、嘘をつかなかったのだ。

辺鄙(ヘンピ)なところに連れて行かれたり、このまま売られてしまうのではないか……

と、心のどこかで思っていた。


 困ったように笑う禅くんが、よくわからない。



 あたしの前を歩き、大きな白い扉を開いた禅くん。

「戻りましたー」

 大きな声で玄関ホールに響かせると、わらわらと人が集まってきた。


「あ、禅!こっちに顔出すの久しぶりだな」

「また大きくなったわね、禅」

 などと、この屋敷の従業員にとめどなく声をかけられている。

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