絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 わけ隔てない、という意味では小町に似ていたけれど。


初対面──本当は違うけど、のあたしにライバル宣言した彼のことだ。

絶対に油断してはならないはず。


なんといっても、あのミカドの友達でしょ!?


 そんなあたしの疑心の眼を気にもせず。


「僕は神城 禅(カミシロ ゼン)。帝の幼なじみみたいなもんかな」

 よろしく、といわんばかりに、明るく笑った。

そして釣り眼がちの彼に、あたしもなんとなく続いた。


「……あ、えっと、涼原愛子です…。ど、どういうわけか、藤堂家で住み込みで働いてます…」


 ホント、どうしてこうなったのかあたしでさえわからない。


「うん、事情は大体聞いてるよ」

「聞いてるって──…」


 ……誰に?

 あたしの言葉を遮るように、ぽすん、と彼は背もたれに寄りかかる。


「君の家が可哀想なくらい貧乏なことも、帝の専属になったことも。
──皇くんに片思いしてることも、ね」

「べ、べつに、あたしは……っ」


 なんでそんなことまで…!

かあっと赤くなった顔を見られたくなくて、慌ててうつむく。


それすらも楽しむように、彼は喉をくっくと鳴らしていた。


さすが、ミカドの友達。


「まあ皇くん、優しいからね。……その分、残酷だけど」


 そんな一言を、あたしは否定できなかった。

紅葉さんのこと──ううん、実の弟であるミカドのことを考えたら、その意味がなんとなくわかる気がしたから。

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