2人が帰った後、百合は暫く座り込んで話をしていたが、仕事で慌てて出て行った。
「ふう…」
ようやく1人きりになれた店の中で、思わず深い溜め息を吐いた。
あの高山という刑事、最後に意味深な言葉を残して行った…
まさか、あれが指を切り取る為に、耳切り魔にみせかけた犯行だと見抜いたのではあるまいか?
いや…
例えそうだとしても、俺の犯行だとは思うまい。
来店客もいないし、指輪を作ろうと思い立ち上がった時、高山が床を見詰めていた事を思い出した。
一体何を見ていたんだ?
ちょうどカウンターに入る辺り、確かこの辺りを…
俺は高山が見詰めていた床を見て、息を飲んだ。
「マズイな…」
そこには、昨夜指を持ち帰った時に、どこから滴り落ちたであろう小さな血痕があった。
高山はこの血痕を見付け、明らかに俺を疑ってあんな捨て台詞を残したのだ。
これは何とかしなければ…
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