「とりあえず、先日見せてもらった写真の男は来てませんよ。来店客は女性ばかりです。
もしも怪しい男が来店したら、引き留めておいて直ぐに連絡します」
落ち着いた口調で草壁さん告げ高山に視線を移すと、床の一部分を見詰めながら何か考えている様だった。
「分かりました。
ご協力お願いします。
高山刑事、次の店に行きましょう。
高山さん?」
「はい」
草壁さんは高山に声を掛け、一度頭を下げると扉を開けて出て行った。
しかし高山は入口で振り返り、何もかも見透かした様な冷淡な目で俺を見て言った。
「葉山さん…
私は、最近起きた2つの事件は、別の犯人の犯行だと思っています。
他の事件の犯行時刻は、23時から25時までの間。通り魔的に犯行に及んでいます。
しかし、最近の事件は犯行時刻が21時台。しかも周到に品定めをしていた形跡があります。
犯人が欲しかった物は、本当に耳なのでしょうか?」
高山は頭を下げて、店を出て行った。
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