その時――
張り詰めた空気を切り裂く様に、入口の扉が開いた。
「敏樹ぃ…」
百合だ。
「あ、ごめんなさい。お客さんがいたんだ…」
一瞬、入りかけ、2人の姿を確認した百合は、頭を下げて店を出て行こうとした。
「あ、いや大丈夫だ。客じゃなくて、話をしに来てるだけだから…」
咄嗟に話を切り上げる切っ掛けを見付けた俺は、百合を引き留めた。
高山と、これ以上話をしたくなかったのだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて…
あ、あれ?
高山先輩じゃないですか!!」
高山先輩?
「ああ、久し振り」
「知り合い…なのか?」
「あ、うん。
高校の時の2つ上の先輩。グラブが一緒だったの。
先輩は優秀だったから、国立大学に進学して確か留学したとか…」
嫌な雰囲気だ。
高山と百合が知り合いだとは…
この場を何とか凌いで、早くこの2人をここから追い出さなくては――
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