指の激痛が治まり、再びいつもの手に戻った。


指輪は契約とその代償を渡した証しとして、俺の指に溶け込んでいる…

その事は疑い様の無い事実ではあるが、今回の能力は流石に俄には信じ難い。


試してみなければ…


俺は服を着替えると、作業台の上に置いていたナイフを手にして作業場を出た。
そして店の扉を開け、階段を上がった。


既に時刻は24時を回り、周囲に人影は見えない…

俺は銭湯の方に歩いて行き、銭湯の目の前を通り過ぎると、更にその向こう側にある住宅地に向かった。


銭湯から300メートル程先にある、何の特徴もない民家…
以前、この辺りを散歩している時、この家に飼われている大型犬に激しく吠えられた事があった。

飼い主は側にいたが、犬が吠える事は当然だと言わんばかりに俺を睨み付けた。


その光景は、今でも俺の脳裏に焼き付いて離れない…

一石二鳥だ。


俺はナイフを右手でグッと握りしめると、アルミ製の格子状になっている門近付いた――


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