ケースは鉄の塊で、縁から1センチの位置から2センチ程度深くなっている。そして、底の部分には5つの窪みが掘られており、その1つ1つに指輪が嵌め込まれていた。
余程気密性が高いのか、それとも以前の持ち主が大切にしていたのかは分不明であるが、中は全く錆びる事もなくライトの光を反射して鈍い銀色に輝いている。
俺はその何とも表現出来ない禍々しい光景に、言葉を失って見入った。嵌め込まれている指輪が黒い霧の様な物で包み込まれていて、キンキンと冷気を放っていたのだ。
「いつまでも、こうして眺めていても仕方がない。指輪を抜いて見てみるか・・・」
俺は一番右側の指輪に手を伸ばし、親指と人差し指で摘まんでケースから抜き取った。
指輪はきつく嵌まっていて力を入れなければ取れないと様に見えていたが、意外にもあっさりと抜けた。



