地獄の底から噴き出す様な溜め息と共に、作業台専用の椅子に静かに腰を下ろした。

それは、心の底に眠る更なる欲望の始まりだった…


人間の欲望には限りがない。
1つ手に入れば、より高い欲求が出現し、それに支配される――



もしかして…
指だけではなく、手首から先の方が良いのではないか?

指だけだとディスプレイに困るし、ちょうど切断部分に指輪が嵌まっている状態になり、いくら綺麗に切れているとはいえ……


そうだ――

手首で切り落として持ち帰れば、切断面を下にして立てる事も出来るし、指輪も行き過ぎて反対側から抜ける事もない。


そうか手首なんだ!!

切断する位置は指の付け根ではなく、手首だったんだ。手首から先を切り落として、持ち帰れば良かったんだ!!



「おっと…
これは俺には必要ないな」

ひとしきり自問自答し自己完結した俺は、ポケットで押し潰されていた耳を取り出してゴミ箱に放り投げた。


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