しかし、これが何であるにしても、結局開かなければ何の意味も無い。
俺はケースを左手で押さえ付けると、右手で上蓋を強く引っ張った。
するとキリキリという金属が擦れる嫌な音がし、本体と上蓋の間から赤茶けた錆がポロポロと机に落ちた。
これって、もしかしたら開くんじゃないのか?
そう思った瞬間、赤い錆が爆発的に飛び散り、右手が大きく弾けた。一拍遅れ、肉が腐った様な異臭が室内に充満した。
余りの息苦しさと臭いに、思わず咳き込む。
「ゲホ、ゲホ・・・
何だよ、意外に簡単に開くじゃないか。
あの店主に、力が足りなかっただけなんじゃないのか?」
とは言え、手が震えるほど力が必要だった訳でもないのだが。
俺は右手に持っていた上蓋を机に置くと、ケースの中を覗き込んだ。



