「・・・――犯人は鋭利な刃物で耳を切り取るという残忍な犯行を繰り返しており、犠牲者はこれで7人になりました――・・・」

家電ショップの前を通り掛かると、通り魔事件の報道が耳に飛び込んできた。最近は物騒な事件が多い。しかも近所で発生している。


それにしても、一体何を考えているのだろう。耳を大量に集めて、どうしようというのか?

まあ、俺には関係の無い話だ。


家電ショップの前を離れ、その隣にある大人向けのブティック前を通り過ぎる。直ぐに、自分のジュエリーショップがあるビルの前に辿り着いた。

通りから見てビルの右側にある、幅3メートル程の茶色い階段。コツコツと靴を鳴らしながら、俺は下りて行く。


階段を下り切ると突き当たる白い扉がある。それが俺の店、【BOX】だ。

お客さんのジュエリーボックスになりたいという思いを込め、単純だがこの名前を付けた。


俺はズボンのポケットから鍵を取り出し、扉を開けて店内に入った。