指――・・・

あの洗剤を持つ指が、段ボール箱を持つ指が、今日俺の物になる。そして指輪達の飾り棚が出来上がる!!


俺は込み上げてくる笑いを懸命に堪え、手で口を押さえながらホームセンターを後にした。

ああ、もう我慢出来ない。
あの指が手に入ると思うだけで、身体中の細胞が歓喜に震える。


いや、待て待て、あと数時間の我慢だ。
焦らず、計画通りに時を待とう・・・


俺は店に帰ると、作業場にこもり再び指輪を作り始めた。作業台の一番目立つ場所に時計を置き、分針が動く度に身震いをしながら──


やがて時計の針が、20時30分を示した。

俺は作業を止め、ソファーの背もたれに不格好に掛かっていた黒いジャージに着替える。そしてポケットにノミと鎚、ナイフとビンを突っ込む。

歩きながら布テープの輪を左手に通し、タオルを首から下げると、黒い帽子を目深に被って外に出た。