作業場の背もたれがある椅子に深々と座り、何気無くテレビをつけると、ちょうど夕方のニュース番組を放映していた。

女性キャスターの手元が映る度に、画面を凝視する俺は既に正常ではないのかも知れない。


「・・・――次のニュースです。昨夜23時過ぎ、市内の繁華街の路上でまた女性が切り付けられる事件が発生しました。

帰宅途中の女性が、人気の無い路地に入った瞬間、何者かに背後から鋭利な刃物で耳を切り落とされました。

犯人は今回も女性の耳を持ち去っており、犯行の動機など詳しい事はまだ分かっていません――・・・」


いつもなら聞き流すニュース。しかし今日は、耳切り魔の事件を聞きながら、なぜか背中がゾクゾクした。

恐怖からではない。
俺には犯人の動機がありありと分かり、心の底から共感したのだ。

それと同時に、自分自身に起きているジレンマを解消する方法も見えた――