あの日から売上は格段に増加し、確かに俺の生活は楽になった。しかし、俺が認める、指輪を嵌めたいと願う指の持ち主は、全く来店しなかった。


「・・・――昨夜の23時過ぎ、中区の路上で帰宅途中の女性が背後から近付いて来た男に鋭利な刃物で切り付けられ、耳を削ぎ落とされるという事件が発生しました。

先月から同様の事件が多数発生していますが、未だに犯人は捕まっておらず――・・・」


3日前作業場用に買った24インチの液晶テレビから耳切り魔のニュースが流れ、俺は草壁さんの指を思い出した。

既に作業場の机の上には10個以上の指輪が並び、至高の指を持つ者が来店する時をひたすら待っている。


食事や風呂の為に外に出て通りを歩いていると、時々理想的な指を持った女性と擦れ違う。

なぜ来店しない?

なぜ俺の店に来ないんだ?
こんなに美しい指輪達が、ずっと指に嵌めてもらえる時を待っているのに・・・


ほら――

きっと君の指に似合うよ!!