その後、作業場で指輪を作っていると、時々広田さんが紹介してくれた客が来店し、カウンターに飾ってある指輪を買っていった。

しかし、広田さんや草壁さんの様に、俺の胸が高鳴る程の指をした女性が来店する事はなかった。


それでも俺は理想の指を差し出してくれる客が来店する事を信じ、ひたすら指輪を作り続けた。

あの自分の作った指輪がスルリと指に滑り込む瞬間の快感が忘れられず、いや何度でも味わいたくて、至高の指輪を追い求めて作り続けた。


結局、その日は広田さん以外は俺の求める指の持ち主は来店しなかった。翌日も同様に指輪はよく売れたものの、作業場に飾ってある指輪を出す事はなかった。

既に作業場に飾ってある指輪は6個。机の上で眩いばかりの光を放っている。

それはそれで目が眩む程に美しい。


美しいのだが――