俺が階段を下りる後を、草壁さんは追い掛ける様について来る。店の前まで着くと、俺はズボンのポケットに手を突っ込み、扉の鍵を取り出した。

「今日は非番なんです。
仕事で来た訳ではなくて、客として来たんですよ。だから刑事だなんて呼ばずに、普通にお客さんに接する様にして下さい」

俺は手元を右に捻り鍵を開けた。同時に、聞こえたその言葉に思わず振り返ってしまう。


「あ・・・ど、どうぞ。直ぐに明るくしますから」

カウンターの中に入り、電気のスイッチを全て点ける。パッと店内が明るくなり、並べられたジュエリーがキラキラと輝く。


草壁さんはカウンターに向かって歩いて来ると、ショーケースを覗き込む。俺のジュエリーを見定めている。

「葉山さんは、シルバーリングが得意なんですか?これなんて、凄く綺麗・・・」

いや、そのカウンターに置いた薬指の美しさに比べれば、こんな指輪なんて屑みたいなものだ。


再度、目の前にある指に見惚れる。

完璧な指だ。
この指に俺の傑作を嵌めれば芸術作品に・・・
いや、神秘的で聖なる物になるに違いない!!