「ありがとうございます」
ケースを受け取った広田さんは、口では礼を言ったものの表情は少し困っている様に見えた。おそらく、以前付き合いで買ってくれた指輪の事を思い出しているのだろう。
気持ちは分からないでもない。
確かに以前の作品は、今広田さんが手にしている指輪と比較すれば、とても売り物になる作品ではなかった。
少し暗い表情を浮かべた後、愛想笑いと共に広田さんがゆっくりとケースを開く。その瞬間、広田さんは大きく目を見開き、ケースを手にしたまま動きを止めた。
まさか、ダメなのか?
「葉山さん・・・これ、綺麗!!
ホントに貰って良いんですか?
これなら私が指に嵌めておいて、来店客に紹介出来ますよ!!」
「これならって・・・
今までの作品だと、紹介出来ないってこと?」
「あ、いえ・・・まあ、ハハハ。
ちょっと、嵌めてみても良いですか?」
「もちろん。あ、サイズは右手の中指に合わせてあるから・・・」



