商品に目もくれずカウンターに座る俺の元に歩いて来ると、懐から黒い手帳を取り出す。そして同時に、1枚の写真をカウンターの上に置いた。

「この男が来店した事はありませんか?」

写真に写っていたのは、金髪坊主頭の若い男性で、耳には銀色のピアスが3個ぶら下がっていた。

鋭く細い目の奥に、狂気に満ちた闇を感じる。まるで俺を睨み付けている様に。
だが──


「来てないですね。
これだけ特徴があれば、1度でも来ていれば覚えていますよ」

「そうですか・・・」

刑事と思われる女性は少し落胆した表情を見せ、カウンターに置いた写真に手を伸ばす。

「もしかして、連続耳切り事件の容疑者なんですか?」

刑事は写真を懐に入れると、顔を上げて俺を見据えた。そして、他人に洩らさない様に前置きをして話をしてくれた。


「そうです。
この男の名前は、野崎 竜平。連続耳切り事件の重要参考人として、行方を追っています」