俺はカウンターの内側に入り、丸椅子に足を組んで座る百合に歩み寄る。そして、直ぐ目の前のショーケースの上に指輪を置いた。
「どうだ?」
「どうだ・・・って、敏樹の作ったジュエリーなら毎日見て――」
百合は飾り台に嵌まった指輪を1個抜き取って、思わず声を詰まらせた。
「こ、これ・・・誰が作ったの?」
「誰って、俺しかいないだろ」
百合はいきなり俺に抱き付いてきて、首に回した手にグッと力を込める。驚いて固まっていると、耳元で百合が叫ぶ。
「やるじゃん敏樹!!
これなら絶対に売れるよ。ヨーロッパの一流ブランドのジュエリーにも、全然負けてない!!」
百合の喜ぶ姿に俺まで嬉しくなってくる。
独立してからずっと、売れない月は家賃を立て替えてくれたり、食事を持って来てくれたりして支え続けてくれた。
その思いに、やっと応える事が出来そうだ・・・



