その瞬間――


翳された手から黒いモヤの様な物が噴出され、指輪を嵌めていた手に絡み付いた。

「ぐっ…!!」

指輪を嵌めた時と同じ激痛が全身を駆け巡り、必死に堪えていると、指の骨に直接嵌まっていた筈の指輪が4つ宙にユラユラと浮いていた。

そして、悪魔がいつの間にか手にしていた、あの鉄製の箱に戻り、元の場所に音もなく嵌まった。


「これは返してもらう。少量とはいえ、お前が生み出した厄と苦痛は、この中にストックされているのだ。


いつまでも愚かな人間達は、この箱の事をパンドラの箱と呼ぶ。

自分勝手に指輪を使い、厄をもたらしているくせに、それすら認める事が出来ず、箱を開けると災難が襲い掛かってくるると伝承する。


愚かな人間よ…

箱の底に残る物は何か?
その身で、存分に確かめるが良い――」


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