「一体なぜ――」
震える声を精一杯振り絞る草壁さんに、片手を突き出し言葉を遮った。
「目の前にある作業台。その上に並べた指輪を、よく見て下さい。
神々しく、この世の物とは思えない程、美しいと思いませんか?
これらの指輪は、余りの素晴らしい出来映えの為に、店頭に出していない物です。
自分の中にある理想的な指の持ち主以外には、いくら金を積まれても売るつもりはありません。
だからと言って、作業場にただ並べておくといのも、この指輪達に失礼な事です。
それで、この指輪達に専用の飾り棚を用意した訳です」
「な……
何を言ってるんですか!!
そんな下らない事の為に、大勢の人の将来を奪ったんですか!?
たかが指輪の為に…
そんな事が許される筈が無いでしょう!!」
その話に激昂した草壁さんは、身を乗り出して激しい口調で俺を罵った。
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