普段は銀板からジュエリーを作るなんて事はしない。無地のリングを購入して、自分で少し手を加えるだけだ。
俺は手先が器用な方ではない。その自覚があるからこそ、百合があれこれとうるさく言う事も理解している。
しかし――
どうした事か、絶対に作れないはずの曲線が面白い様に削り出される。それどころか、自分の頭の中にある複雑な模様までもが、そのままの形で容易く手の中で完成していく。
俺はいとも簡単に出来上がった指輪を作業台に置き、ライトに輝くジュエリーのフォルムに口元を緩ませる。
間違いなく、サタン・リングは本物だ。
こんな完成度の高いジュエリーが、俺に作れるはずがない。
満面の笑みを浮かべたまま、時間が経つのも忘れて一心不乱で指輪を作り続けた。
俺はジュエリーの中で、一番指輪が好きだ。
美しく輝く指輪がスラリとした長い指に嵌まっている姿を見ると、激しい高揚感で頭が真っ白になる・・・



