ただ……
犯行現場が遠い事件の被害者を勤務先で考えた場合、各事件現場の3キロ以内に店舗と自宅が存在する人を別に見付けました。
冷静に考えてみれば、何の関わりも無い人が、野崎の遺留品の隠し場所を知っている筈がありませんし…
ホームセンターに連日用事がある人なんて、いる筈がありませんよね。
それに、故意に現場に残された指輪は、分かる人には一目で誰の作品か分かるフォルム――」
泣きそうになりながら話を続ける草壁さんを見詰めると、俺はゆっくりと立ち上がり、作業場の扉を開けた。
「どうぞ」
俺は先に中に入ると、草壁さんを招き入れた。
「全てを話しますから、そこに座って下さい」
作業場の入口の横にある椅子に座ると、俺の後に続いて入ってきた草壁さんに、作業台の向こう側に用意しておいた椅子に座る事を勧めた。
草壁さんは室内の光景に言葉を失い、何度も立ち止まりながらも、その椅子に何とか座った。
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