店の扉にはclosedの札をぶら下げ、店内の照明を点けたままで、俺はカウンターに静かに座っていた。


時刻は既に22時を過ぎ、普通なら来店する者など有り得ない。

それでも俺は扉の鍵を開けたまま、扉が開く瞬間を待ち続けていた。



時計の秒針を進める歯車の音が微かに耳に届き、電灯に電流が交錯する電子音だけが室内を駆け巡る…

その空気を掻き乱す様に、スッと扉が開いた。



「いらっしゃいませ」


カウンターの前まで俯いたまま無言で歩いて来た草壁さんは、俺に指輪を差し出した。

それは、巫女の脳味噌に差し込んだ、あの指輪だった。


俺が指輪を受け取ると、草壁さんは固く閉じていた口をゆっくりと開いた。

「…――事件現場と、あの3人のジュエリーデザイナーの店と自宅…

地図上で確認しましたが、3人共に何の関連性も見出だせませんでした。


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