店を出ようと扉に手を掛けた瞬間、不意に肩を掴まれた。俺は驚いて、素早く振り返る。
しかし、白髪の店主は少しも動いた様子もなく、変わらずに穏やかな表情で座っている。
やはり、この店には何かがある・・・
再度店内を見回すと、妙に右側の古い木製の家具に目が引き付けられた。
今時裸電球1つしか照明器具がない店内を、俺は1歩2歩とゆっくり奥へと歩き出す。
キシキシと床の軋む音がする中、まるで何かに導かれる様に古い戸棚へと歩み寄る。正面に立つと戸棚はショーケースになっていて、中にはアンティークのアクセサリーが飾る訳でもなく、無造作に置いてあった。
アクセサリーは銀製品のみで、指輪の他にネックレスやブローチ・・・
どれも、多分かなり古い品だろう。
・・・――ん?
その戸棚の一番奥に置いてある赤茶色に錆びた鉄製のケースに、なぜか俺の目は釘付けになった。



