徐々にではあるが、確実に草壁さんは俺に近付きつつある。
俺も指輪の完成を、急がなければならない…
その日の午後、どうして分からなかった俺の目指す指輪のヒントは、思わぬ所から得られる事になった――
16時過ぎに来店した客に、カウンターのショーケースに入れてある指輪を見せて欲しいと言われ、ケースごと出した時の事だ。
その客は一風変わったエキゾチックな風貌で、くすんだ茶色のショールを纏い、黒髪を細かく編んみ…
そして、薄い茶色のサングラスに、大粒の薄汚れた白いネックレスを2本、首からぶら下げていた。
指輪を見る彼女の指を見ると、やはり小汚ない白い指輪をした。
俺はなぜだか無性に、その指輪が気になり、彼女に尋ねた。
「その指輪、珍しいですよね。どちらで購入されたんですか?」
「あ、これ?」
彼女は指輪を外し、俺の目の前にに近付けて話した。
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