草壁さんは、事件現場を改めて検証すると言い残すと、足早に店を出て行った。



少しずつ、草壁さんが俺に近付いて来る――


タイムリミットがあり徐々に迫ってくるという事は、激しく創作意欲を掻き立てられる。

草壁さんが俺に辿り着くまで、あとどれだけの時間が残されているのだろうか?


それ迄に、俺の全てを注ぎ込んだ、最高傑作を作らなければ――



俺は丸椅子から立ち上がると、作業場の扉を開けて中に入った。

直ぐに作業台に座るが、手は動かない。

至高の指輪とは、一体との様なものなのか、作れば作る程分からなくなっていた…

どの様なフォルムにしようが、どの様に装飾を施そうが、納得がいく物とは印象が違っていたのだ。


今日も作業台に並ぶ指輪を前にし、自問自答を続ける…

「この指輪達には、何かが足りない。
一体何が必要なんだ?」


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