俺は百合の肩口を掴み、右手を振り上げた。
「待って!!
本当に、私は何も言ってないし、何も知らなかったの!!
本当に、何も――」
「見苦しい…
この期に及んで、知らないなんて言い訳しても、何も変わりはしない。
仮に今まで知らなかったにしても、今はもう知っているだろ」
百合は俺の目を見詰め、今まで見た事のない様な大粒の涙をポロポロと…
本当に、頬を転がり落ちる様に流れた。
「分かった…
もう、敏樹の思う様にすれば良い。
でもね、これだけは分かって欲しいの…
私には今も、例え殺されても敏樹しかいない。生まれ変わっても、敏樹とまた会いたいし、また愛したい。
例え、また同じ結末が待っていようとも…
だから、これだけは信じて欲しいの。
私は今まで一度も敏樹を裏切った事はないし、地獄にも一緒に堕ちるから…ね」
その時、俺の右手が百合の首に勢いよく振り下ろされた――
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