白い床に赤黒い液体がポタポタと落ち、見る間に直径30センチ程の円を描いた。
その液体は引き抜いた百合の指にも絡み付き、錆びた鉄の様な異臭を放っていた。
その状況に、百合の表情は一気に強張り、口元は笑ったまま固まっていた。
「本物だって言っただろ」
俺の顔を見て本当だと確信した百合は、持っていた広田さんの手を床に落とした。
「おいおい、床に落として傷でもついたらどうするんだ」
俺はユラリと作業台の縁に手をかけ、百合の側まで行って手を拾った。
そして、丹念に傷が出来なかったか確認すると、その手に頬擦りをして元の場所に置いた。
「こ、これって…一体どういう事?
まさか敏樹が――」
百合はまだ事態を完全には理解出来ていない様子だったが、足を震わせながらも懸命に声を振り絞った。
「そうだ。
俺が指輪を飾る為に作った、飾り棚だ」
.



