先に俺が作業場に入り、扉の位置で百合を手招きした。
「うわぁ、ここに入るの初めて!!」
何も知らない百合は、社会見学に来た小学生の様にはしゃいで入って来た。
「ちょっと驚いた、意外と綺麗にしてあるのね。
ふぅん、この長机が作業台なんだ。これはまだ作り掛けなんだね…」
俺は後ろ手に作業場の扉を閉め、念の為に鍵をした。
百合は作業台の周りを物珍しそうに一周すると、不意に立ち止まった。
「あの机は何?」
その視線は作業場の中心置いてある、あの飾り台に注がれていた。
アンティーク机にゆっくりと近付いた百合は、机の上の2本の腕と手首、それに指を指差した。
「これ…マネキン?
最近は、こんなリアルな物があるのね。シリコンか何かで出来てるの?」
俺は軽く口先で笑うと、百合に歩み寄りながら言った。
「手に取って見ても良いぞ」
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